食と農

農業のある大阪の未来01:松岡農園

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話し手
松岡孝明さん、尚子さん
取材地
八尾市 松岡農園

農業のある大阪の未来
農業人を育てることに努めていきたい

八尾市
松岡農園 松岡孝明さん、尚子さん


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八尾の松岡農園に行ってきました!

もうすぐ6月になろうかという初夏の午前6時。気温18℃、空が晴れ渡り、涼やかな風がビニールハウスに吹き付ける。大阪市の南東部に隣接する八尾市に松岡農園さんがある。この時期は、「八尾えだまめ」の収穫が始まったところで、収穫作業は早朝に行われる。夏場でもあり、気温によって鮮度が左右される枝豆をできるだけ傷めないようにするための配慮でもある。
松岡農園さんでは、「八尾若ごぼう」と「八尾えだまめ」という特産品を栽培、出荷されている。大阪に農業のイメージがあまりない方もおられるかもしれない。が、多くの特産品があるし、近年では、復活生産されている伝統野菜もある。その土地で育まれる農産物には、意味があるし、物語があり、歴史もある。その土地に生きる人の思いや、その土地の持つ文化などを背景にして、その土地の力となって表れてくる。農は地域に欠かせない文化の一つ。大阪八尾においても、「八尾若ごぼう」、「八尾えだまめ」という作物となり、大阪の食をかたちづくっている。大消費地が近く、輸送に日にちがかからないため、食べごろの状態で収穫ができ、最高の状態で食卓に届けられるのも、近郊地の農業の特徴でもある。

親の世代を引き継ぎ、約30年間農業生産を続けておられる松岡さんに、特産品を育て広めていくとともに、都市で農業を続けることの大切さと難しさをお伺いしました。

初夏から夏にかけて、松岡農園では八尾えだまめの栽培と出荷が最盛期を迎える。ハウスと路地の両方で栽培が行われているが、この日はハウスでの収穫に立ち会った。段取りを整え、朝6時から収穫が始まる。枝豆は鮮度で味の良し悪しが決まるので、収穫から出荷までそれぞれの工程で鮮度を保つための工夫が施されている。
太陽の光が当たった状態で収穫すると、枝豆の温度が上がり鮮度が落ちる原因になるため、日の出前に収穫。収穫した枝豆は脱さや機でさやをもぎ取り、素早く選別し、14℃の井戸水で洗浄。気温の影響を受けないよう流れ作業で行い、洗浄が終わったら冷蔵庫に入れる。一連の作業は、おいしいと思ってもらえるよう、また特産品としての八尾のえだまめの優位性を保つための努力でもある。

Q:若ごぼうも枝豆も八尾ブランドとして売っておられます。作り手としてやりやすいですか。
「枝豆は「八尾のえだまめ」として特産品指定してもらっているので、市がPRしやすく、ポスターなどでの宣伝もしてもらえるので助かっています。その分おいしいもんつくっていかんとあかんと思てます。「八尾えだまめ」言うてもどこの枝豆といっしょや、思われたらあかんので。鮮度を大事にして、なるべくおいしい状態にして、やっぱ八尾のえだまめおいしいなぁ、言うてもらえるようにやっていかんと、あかんのちがうかな。」

しかし松岡農園のファンも増えている。
「最近は、直接買いに来る人が多なったわ。最低1kg売り、受け取りに来てもらうのが条件やけど、送ったら喜ばれてとか、多い時やったら個人で売るのが多いときがある。買いに来てもらうと楽な面もあるけど、気ぃ使う面もある。そうやっておいしいから言うて来てもらうから、絶対まずいもんとか 味のないもん渡されへんから。なるべくおいしいもん渡すようにしてます。そしたら、リピーターになり、その人がまた宣伝して買いに来はる人がいてる。」

枝豆の食べごろ

「新しい豆やったら湯がく時間も短い。今ハウスで収穫してるものなら沸騰してから3分くらいで十分。湯がく時間が短ければ短いほど香りと味が落ちない。ひねて来た豆なら5分、16分と湯がかなあかんようになったら味も香りも落ちておいしくなくなるくる。だから豆も若なかったらあかん。若くても薄かったらあかん。プクッ、としてて若い豆。これがなかなか見極めが難しい。一日二日で、あぁもう過ぎちゃったな、とか、あぁまだ1日早かったな、と。収穫時間がすごく短い。行けるやろうって、過信したら絶対ダメで、天候一つでがらった変わりよるし。」

Q:都市の近郊で農業を行っている良さや困りごとなどはどんなことが?
「近郊でやっていると市場が近いというメリットがある。収穫してすぐに市場に出荷できるいうのがありがたい。まわりが家やったら音とか臭い、あと薬剤などの散布に気を遣うところがありますね。だからなるべく人の少ないときにやるようにしている。」
「一番の難しい所は、担い手、後継ぎが少ない。農業したいというて来てくれる人はおるけれど、全く経験のない人がやるといっても、一から十まで教えなあかん。で、1年たってもなかなか覚えられへん。給料出してまで人を教えるというのは難しい。経験のある人でも、商売になるまでには相当時間かかると思います。年によっても違うし。例えば今年は、梅雨が前倒しで例年なら5月の初めにしている作業が全然できなくなって。毎年毎年同じ気候というのはないから、それに合わせて変えていかなかん。マニュアルがあって無いようなもんやから、それに合わせてやっていかんとあかんから。それは今までの経験を踏まえてで、経験でしか覚えられへん。1年、2年やったから覚えた、というのはないから。」
「あと難しいのは土地やね。農業やりたいですと、実際その人が独立したときに、土地を借りてするんやけど、これまで畑やってた土地をすぐ貸してもらえるわけではなく、(放棄地なので)荒れて草も生えてれば、凹凸もある。それを整地して、実際野菜が収穫できるまで最低1年はかかる。除草してきれいな畑にしようと思ったら2~3年はかかる。それで野菜つくり始めて4年、5年たったころに「返してくれ」なんて言われたら、次また借りなあかんとなるから、新規就農で難しいところちゃうかな。新規就農には国とか市から補助とか助成金とかはあるけれど、お金だけの問題じゃなしに、土地をいかに貸したい人もおれば借りたい人もおるから、マッチングをうまいことしてくれへんかなと思います。最近農協や市で、農業できなくなった畑を誰かに借りてほしい、けど個人的に貸すのは怖いから、農協なり市に仲に入ってもらって貸すという制度があるけれど、なかなか行き渡って無くて。もうちょっと幅広くPRしてもらって、10年やったら10年と借りれるようにしてもらったら、8年目にまた次の畑を借りる、というようにやって行けるでしょ。急に返してと言われても次借りるところ見つからんし、借りれたとしてもすぐに畑にはでけへんから、そこで収入が途絶えてしまったら難しいから。自分の土地やったらずっと使えるんやけど、なかなか土地買うてまで農業なんてでけへん。特に大阪では。担い手と土地の問題やね。」

Q:新規就農する方はおられないのでしょうか
「いま新規就農は、農協を通じて入ってこられるけど、応募したら来るのは来るんですわ。でもその人がほんまに農業やりたいかいうたら、そうでもない人が半分以上やね。農業ってなんか青空の下でのびのびとできるというイメージ持ってやって来て、実際やってみたら全然そんなんと違うと。入って1か月くらいでやめる人がほとんどやね。まして、お給料まで払わなあかんからね。ほんまにやる気のある人に来てもらわんと。」

Q:新規就農で食べていける規模ってどのくらいでしょうか?
「いま一人最低3反(*)というんやけど、3反ではしんどいと思う。5反ほどなかったら。3反できれいに回していけば行けると思うけど、雨降ってトラクター使えないとかなったら作付けができない状態が続くでしょ。収穫して、次の畑を耕すことができんかったらその期間収入ゼロになるから、5反でその余裕があれば、行けると思う。」
「人を雇おうと思ったら土地増やさなあきません。で、その人が辞めたら増やした分が負担になるわけです。借りた以上は守せなあかんから。大きい規模で農業してる人は、10人雇って11人に増えたとか9人になったとかだったら、そこは大丈夫やと思うけど、一人が0になった、0が二人になったとなったら変わってきよるんですわ。」
大阪では奥さんと二人でしてるとこ多いと思う。忙しいときだけアルバイトに来てもらうというのはあるけど、常時、常勤で雇うのはなかなか少ないんちゃうかな。」
「よっぽど段取りよくせんと。種まいて、早くても2か月先の話になるからね。枝豆で2か月、ねぎで3か月。若ごぼうなんか半年先の話やから。10月かかりにまいて、収穫は3月、4月やから。その間その畑はほかの作付けはできないので、若ごぼうだけで5反、6反。残りの畑でねぎやらほうれん草つくって出荷収入出さんとあかん。それでやっぱり一人雇おうと思ったら1町くらい必要になるわね。」

Q:松岡さんとして今後何かしていけたらと思われることは
「あと20年できたらいいなぁと思っているけど、いままで培ってきた技術、経験、誰かに伝授できたらいいなぁと思っている。いま一人来てもらっているので、知ってる限りは教えていこうと思うてる。やっぱりゼロからやるとなったらしんどいし、無駄が多なるから、経験を教えていけたらええなぁと。あと技術とかね。」

Q:大阪で農業を広めるの難しいですか
「農業するより、不動産で駐車場にするなり商業地で貸すほうが安定して収入あるし。なんぼでも農地は減っていく一方やと思うわ、大阪は。
区画整理とか入って、開けた農地が一瞬で商業地になったり。よっぽどええもんつくって名前を売って出荷せんと、専業だけで食べていこうと思ったらしんどいですね。」

農業者の高齢化により、耕作放棄地が増えています。また、重労働で薄利な農業より、農地を転用し不動産活用してしまうのは当然だと思います。今は海外からたくさんの食糧が輸入されるようになっていますが、もし外国が食料を売ってくれなくなった時、日本の食糧を賄うのに適した農地も担い手も失っていることになるかも知れません。

農のある都市こそ豊かな都市という未来へ

インタビューを終えて。
他府県同様、大阪府下の近郊都市では、年々耕作地も、専業農家も減少している。ここ八尾でもご多分に漏れず都市開発が進み、住宅地などへの農地転用が目に見えて増えているというお話を伺った。経済成長を追いかけ、流入人口を増大させることで、税収増や大規模都市開発を続けるというビジョンは、ほんとうに続けることは可能なのでしょうか。農業ではもうからないから商業地や住宅地に転用するというのは、個人のことを考えれば致し方ないことはあると思う。しかし、自治体、行政が50年先、100年先の地域環境や地域生活を考えるとき、高度経済成長時代の発想そのままで良いはずはありません。農地、農園は、ただ農業をするというだけでなく、災害時の避難地や食料供給といった防災機能としての側面も持っています。そうした農地を「儲かる、儲からない」という尺度だけで商業地や住宅地に転用していくことを良しとしてよいのでしょうか。特に食料自給率が40%切っている日本、その中でも自給率の低い大阪という都市部においては、都市農業のあり方や、都市型農園という発想も織り込みながら、農のあるモデル都市づくりという新しいビジョンが必要ではないでしょうか。
農地、耕作放棄地を地域内の社会共通資産としてとらえ、平時、災害時といった様々な局面を織り込んだ地域の生活環境の中でどのように活用していくのかを考え、計画化することで、新しい都市計画が見えてくるのではないでしょうか。
都市生活と農とのより深く新しい関係性を築くという未来もあるはずです。

*3反
畑や田んぼを測る面積の単位。1反は畳600畳分(31.5m×31.5m=992.25㎡、約1,000㎡)。3反は約3000㎡。1町は約10反 1ヘクタール(10,000㎡)。


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八尾えだまめの美味しいゆで方