大阪市政

大阪市の成長戦略、都市計画は大阪府任せでいいのか

話し手
川嶋広稔市会議員
取材・編集
UCO

大阪府によるボッタクリを証明する「広域一元化条例」検証第1弾

大阪市の成長戦略、都市計画は大阪府任せでいいのか。

5月の市議会で、広域一元化条例に関連する議案が可決されました。大阪の成長戦略とまちづくりに関する都市計画を大阪府に事務委託するという「広域一元が条例」ですが、その具体的な実施方法については、条例に盛り込まれず、附帯決議として「事務委託に係る規約の策定にあたっては、次の事項を遵守すること。」として前回提出された議案に盛り込まれることとなりました。

では、3月に議決された「大阪市及び大阪府における一体的な行政運営の推進に関する条例案」と今回の規約とはどのような関係にあり、どのようなことが決定されたのでしょうか。

これまで広域一元化条例に関して議案を読み込み、sns等で発信を続けている川嶋広稔議員にその内容と問題点をお聞きしました。

第1回では、規約が決められたことでどのような課題が生まれたかを検証します。

規約の前提が市民を欺くつくりになっている

今回、議決された規約は大きく2つ。大阪市の成長戦略に関する事務を大阪府に委託するためのものと、まちづくりにかかわる都市計画に関する事務を大阪府に委託するためのもの。

この規約が何に基づいているものかですが、いずれも第1条では3月に議決されたそれぞれの条例に基づくものとしながら、実際には地方自治法をその法的根拠としている点が詐欺的と言わざるを得ません。

大阪市の成長戦略に関する事務では、地方自治法第252条の規定を持ち出し、戦略の策定及び進捗管理に関する事務を委託するとしています。また、都市計画では、「事務の委託の対象となる 都市計画」として、同じく地方自治法第252条の4規定から、都市計画の決定に関する事務を大阪府に委託するとしています。つまり、3月に決めた広域一元化条例の規約であるとしながら、その実は地方自治法によって規定される成長戦略、都市計画に規定される事案の規約ということとなっています。

このことは非常に重要で、この規約は地方自治法と一体となっている規約で、先の広域一元化条例を廃止したとしても、今回の規約は何ら制約を受けず、地方自治法が指定している成長戦略と都市計画は、この規約によって進めることができるというものです。つまり、広域一元化条例に基づくというように関係性があるように書かれているけれども、実際には地方自治法に基づいた規約になっています。つまり、議会に対しても、市民に対しても大きな欺き行為だということです。

委託する事務(業務)に関する費用が決められていない

2つの規約に共通する課題としては、事務委託の経費の持ち方が決められていないという点。地方自治法では、費用はあらかじめ決めておかなければならないとしているけれども、今回の規約ではいずれも決められていません。

事務の委託の範囲については、都市計画については、大規模開発の内容が決められているので、その範囲を逸脱することはありません。しかし成長戦略については、以下のように条文の4つ目に「大阪市が大阪府に策定を委託する必要があるもの」とあり、拡大解釈できるようになっています。

(1)大阪の成長戦略
(2)大阪の再生・成長に向けた新戦略
(3)万博のインパクトを活かした大阪の将来に向けたビジョン
(4)前3号に掲げるもののほか、大阪の成長及び発展に関する基本的な方針であって、大阪市が大阪府に策定を委託する必要があるもの

しかもその続きに、その戦略については、「副首都推進本部(大阪府市)会議における協議により定めるものとする。」と書かれています。つまり、議会の関与なく、知事、市長の独断で行われる、もしくは副首都推進本部の会議で決まれば何も言えない。これはつまり「白紙委任」の規約となっている点です。大阪市として必要な戦略が描けるのかどうかが疑問となっています。

地方自治法で事務委託をする場合、限定的に事務委託をしなければならないとされているにも関わらず、限定的ではなく場合によっては白紙委任の状態になってしまう恐れがあります。

今回の規約での大きな課題と問題視する点としては3つ。

1.条例を廃止しても規約は廃止できない
2.事務委託の範囲が限定的ではない
3.費用が定められていない

「ワンストップ窓口」とは裏腹に窓口が2つになって事業者負担が増える

都市計画の事務委託問題では、本来大阪市では窓口が1つだったものが複数になるということです。

大きな都市計画を進めるにあたっては、いろいろな調整事項が出てきます。例えば道路のつけ方をどうするのか。あるいは大規模開発などで公園を設置することになれば、その管理はどうするのか。大阪市内の開発に関係すれば、大阪市との調整事項が多くなります。大阪市単体であれば大阪市として窓口は一本化され、連携も調整もしやすかった。ところが、大規模部分だけが大阪府に委託することになれば、大阪市の関係する様々な部門については、両方にまたがってしまいます。今回の議案では新しく「大阪都市計画局」という組織をつくることも出ており、この「大阪都市計画局」が受け口となり、総合的にワンストップ窓口をつくる、あるいは連絡調整する窓口をつくることで解決できる、と市側は言っています。

しかし、本来大きな開発で「大阪市」という窓口が1つだったものが、「大阪都市計画局」と「大阪市」という2つになることによって、事業者側から見れば、調整にかかる時間が増えるというリスクが出てきます。

「ワンストップ窓口でスピードアップを図ります」といいながら、今よりは行政レベルが落ちるのは明らかです。

また地方自治体では、都市計画を決めるときには「都市計画審議会」という機関があり、そこで都市計画の決定をします。この審議会も、これまでだったら大阪市の都市計画審議会に諮ればよかったものが、大阪府に事務委託することで、大阪府の都市計画審議会に諮ることになります。加えて、規約の中には、大阪市長は、「大阪市都市計画審議会の意見を聴取する。」ことになっています。つまり、「大阪市都市計画審議会」を開いて意見を聞いて、その後「大阪府の都市計画審議会」に諮ることで調整に時間がかかり、都市計画審議会も2回開くことで時間もかかる。これによって民間事業者側が大きなリスクを負うことになります。

現在政令市で1本で行っている都市計画を大阪府に事務委託することで複雑になり、手間もかかり、場合によっては、非効率的で合理性のない行政が行われることになります。

政治によって蝕まれる住民の自治権

今大阪府市で行われている広域一元化条例をはじめとするさまざまな議案、議決は、極めて政治的であり、政治による自治の侵害、略奪です。これは、自治体の自治放棄というものではなく、住民の持つ自治権の侵害であり、住民に対する背信行為そのものです。大阪府市の両首長は、議会をもって民主主義に則って進めているというのかもしれないが、住民の持つ自治権を守るという前提があってこその議会です。
現在の大阪府市両首長は様々な面で、本来行政の長として行うべきことを怠る一方で、政党党首として政治介入を行ってきました。3回目の緊急事態宣言に伴い、大阪市の小中学校だけがオンライン授業にするという発言はその象徴です。今回の広域一元化条例に関連する一連の議案、議決も政治介入による地方自治、住民自治への侵害であり、挑戦ととらえるほうが理解しやすいのではないでしょうか。
いま世界的には地方自治、住民自治の力が従来の行政を変革させるようになってきています。また国内においても、地方の小さな市町村で小さいながらもこれまでのあり方を変える自治が芽生えています。大阪市という政令指定都市において、本来持っているまちづくりや地域づくりという自治権が政治的策略で奪われようとしていることに憤りを覚えると同時に、激しい危機感を感じずにはいられません。
大阪市の未来を支えるるのは住民であり、大阪市の持つ自治権です。この自治権は、政治的策略によって奪われてはなりません。

[第2回に続く]
第2回では、新たに設置される大阪都市計画局や市民の支払う大阪市民税が大阪府に強奪される構造についてくわしく報告します。

[資料]

議案第128号 大阪の成長及び発展に関する基本的な方針に関する事務の委託に関する規約案

議案第129号 広域的な観点からのまちづくり等に係る都市計画に関する事務の委託に関する規約案