IR 整備計画 市民の疑念放置できぬ

最近は夢洲への IR カジノ誘致「騒動」に振り回されている。大阪カジノが現実味を持ちつつあり、大阪府・市の将来を左右する重大な事態である。危機感を感じながら、私なりに情報発信している。マスコミも大阪府・市の拙速な動きを厳しく批判するようになってきた。朝日 5 日の表題社説に注目したので紹介したい。

特定の業者を優遇するために、市民に負担を押しつけることになるのではないか。カジノを含む統合型リゾート(IR)事業をめぐって浮上したこの疑問に、大阪府・市は詭弁を弄さず、正面から答えるべきだ。大阪が進める構想について、住民らが意見を述べる計 4 回の公聴会が終わった。参加者の多くは、社説が繰り返し指摘してきた、ギャンブル依存症とそれが引き起こす多重債務や家庭崩壊などへの危惧とともに、コロナ禍の収束が見通せぬなか、巨大開発に乗り出すことへの不安を語った。

790 億円にのぼる公費の投入問題も焦点になった。IR の建設予定地は大阪湾の人工島・夢洲で、液状化の恐れがある。所有する大阪市は IR 運営を担う日米の企業グループから対策を求められ、昨年末、土壌汚染対策も含めて費用の全額を負担すると表明した。大阪市が埋め立て地の液状化対策費を負担した例はない。松井一郎市長、そして市と一体で IR を推進する大阪府の吉村洋文知事は、IR への公費投入を否定してきた。それが覆されたことに、人々が驚き、反発するのは当然だ。「市の特別会計から支出するので税金を使うわけではない」「IR の『施設』に公費は使わない」などと説明しているが、およそ通用しない言い訳だ。

府・市の住民への向き合い方にも厳しい声が目立つ。公聴会の開催は IR 整備法で定められている。今回、日程の公表から参加受け付け終了までの期間が短く、発言は1人5 分に限られた。これとは別に 11 回の開催を予定していた説明会は、コロナ禍の拡大を理由に 7 回で打ち切られた。オンラインで参加・視聴できる環境は、どちらにも準備されなかった。

府・市は「カジノに関する入場料と納付金で年に 1060 億円を得る」「経済波及効果は 1 兆 1400 億円に及ぶ」とメリットを強調するが、説得力のある根拠は示せていない。大阪では過去に「都構想」をテーマに住民投票が 2 度行われた。IR をめぐっても投票の実施を求める声が多く出ているが、背景には府・市の説明不足やものごとの進め方に対する不信があるといえよう。

同様に IR に名乗りをあげた和歌山県では、開催予定地の和歌山市の市民が署名を集め、住民投票条例の制定を直接請求したが、市議会は否決した。首長と議会は住民の声をどう受け止め、自治体の運営に生かしていくか、それぞれの姿勢が試される。もうひとつ、誘致をめざす長崎県にとっても、人ごとでは済まされぬ課題だ。

(やまだあきらの定点観測 2022年2月7日)

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